2月の上旬にドイツを飛び出し、北欧三国の一つ、フィンランドに行ってきました。もちろん目的は合気道です。ムーミンでもマリメッコでもありません。Akari道場の遠藤先生講習会に参加してきました。実は、私はスキーもスノーボードも経験がなく、雪国出身でもないため、自分のひざ付近まで積もっている雪の中を歩いたことがありません。そんな人間が真冬のフィンランドに行っても大丈夫なのかと最初は心配でしたが、ありがたいことに、会場はヘルシンキ空港からタクシーに乗って15分で到着する立派なスポーツ施設でしたので何の問題もありませんでした。

 遠藤先生の海外講習会は、今回のヘルシンキが初参加です。最初は人の多さに圧倒されました。ロシアやフランスなど、フィンランド以外からの参加者が非常に多かったです。ちなみに、昨年日本各地で合気道をされていた、フランス人女性のガブリエルさんも参加されていました。そのような環境の中で、青志会の端野さんはもちろん、モスクワの道場から日本人の女性が、また、今回遠藤先生の講習会に参加すること自体が初めてだという日本人の男性もいらっしゃいました。この方、なんと上海の野倉さんの道場で合気道を始め、日本では本部道場に所属されているそうです。たまたまご自身の大学院での研究の一環でドイツにきていたこともあり、今回初参加に至ったとのことでした。日本から遠いフィンランドの地に4人も日本人が集まり、しかもそのうちの一人は初参加なんて、結構すごいことだなと感じました。

 講習会は遠藤先生自身による英語で進行します。後ろ両手首取りや肩取り一教、正面打ち自由技などを行いました。遠藤先生の話の中で特に印象深かった言葉が“Why?”です。受けの人も取りの人も常に“Why?”を考えることが大切であると説明されました。稽古中は、なぜそうなったのか?、どうしてそのような動きが起きたのか?を常に考えるとともに、その時の自身の身体の使い方はどうだったのかをチェックしてくださいと指示がありました。その後も、稽古中に何度も“Why?”と言って参加者に問いかける場面がありました。

「なぜ?」と疑問に持つこと。どうしてそのような動きが起きたのかを考えること。遠藤先生は常に柔らかい動きについて言及されます。確かに、心も身体も凝り固まった状態で稽古をしていては、自分が想像していなかった動きが発生したときに、「あれ?なんだ、この動きは?どうしてこうなったのかな?」と考えるよりも、「ああ、全然うまくできなかった。しかも相手の人の力が強くて腕が痛いし、もう疲れた。」で終わってしまうでしょう。気持ちに余裕がないとき、疲れたから早く時間がすぎないかなと考えてしまった経験が、私自身何度もあります。
そんな状態で稽古をしていては何も新しいものは生まれない。ただただいつも通り、同じ型、同じ動きを繰り返しているだけで何も進歩していない。自分が柔らかくなることで心も身体も自由に動かすことができるようになれば、そこに今までとは違うものが見えてくるようになる。その今までとは違うものというのが、自分の中で具体化されたとき、はじめて他人の目に見える変化として現れるのかなと思いました。果たして日本に帰った時、私の変化はほかの人の目に映ることができるのだろうかと、講習会後心配になった次第です。

 最後に一緒に参加した青志会の端野さんからいただいた講習会中の面白エピソードを一つ。最終日の稽古中の見取りでのことです。遠藤先生が、「硬い日本人、どこ?」と日本語で突然呼び掛け、初参加の日本人男性を探して見取りに呼ぶこと数回。「足の短い日本人」として青志会の端野さんを呼び、でも「そのほうが得なんです」とフォローが入るも、さらに追いうちをかけて「このような『手の短い人』とやる場合にはどうするのか」と説明を始めるという場面も。ヨーロッパの人たちは、やはり背が高くて手足の長い人が多いので、私自身とても参考になりました。そういう意味で自分が日本代表として見取りに呼ばれなくてよかったと少しだけ思う反面、やっぱり見取りに呼ばれたかったな、とも思うちょっと複雑な心境でした。

Akari道場のHP
https://www.akari.fi/fi/